レビュー：『RYOKO』三ツ橋快人 食べるために戦うセーラー服少女

長期休載を経てサンデーに帰ってきたRYOKO。2巻3巻が同時発売されてます。

コナンと安室とダブルRYOKO。色合いがポップでなんか良い。 pic.twitter.com/5riTzOJeB4

— stock (@dcstupidbird) February 20, 2019

1巻は3月4日まで無料配信中なのでぜひ読んでみて。 

RYOKO（１）【期間限定　無料お試し版】 (少年サンデーコミックス)

あらすじ引用

「今日の夕飯は野菜スープなので、『食材』調達にきました。」

数年前、政府が投与した秘薬により、
「食材」が自我を持ち肥大化して人を襲い始めた日本。

食材が蔓延るこの国から人は消え、街は今や誰の姿もない。

それでも、幼き少女・料子は日常の食卓と家族を守るため、
巨躯なる食材を今日も狩る！

「皆で美味しいハンバーグ、食べよ！」

バケモノ食材vs日本刀少女！
新連載・即・大反響！　

超新鋭作家による
「終末の食卓バトルアクション」堂々開幕！！

とのこと。

日本刀を持ってセーラー服を着て戦う少女の話です。
セーラー服は大事。
世界観はいわゆるディストピア。静かに退廃する街。そこに現れるのは食材モンスター。モンスターを倒すと空から降ってくる食材たち…。
文字で書くとギャグっぽいですが正当なバトル漫画で、とにかくセンスが良いんです、この作者。
画面も独特だし、最大の敵が白米だったりするのも面白い。
退廃した街の中でセーラー服の少女が戦うのも、好きな人多そう。私は問答無用で好きです。
キャラクターたちも好感がもてる。とくに主役の料子というキャラが背負う孤独があるのが、エモいポイント。
突然日本中が襲われ、母親も亡くし、子どもたちを守り義足となった父の代わりに料子はご近所さん（師匠）の元で修行し戦うことを決意する。人も殆ど生存しておらず、働く場所も無い。ただ生きるために食べるだけの怪物たちの世界で、料子は父と幼い弟にご飯を食べさせる大黒柱となります。
先の見えない世界で、家族と居ることだけが救い。そこに孤独や喪失感が無いわけでは無く、でもそんなことを言っている場合でもない。色んなものを無意識的に諦めているけれど、それでも精一杯生きている。

「食べるために戦う」といったら、『この世界の片隅に』などを思い出します。
あっちは戦争をベースに史実に基づいて作った話で、RYOKOは完全にSFフィクションバトル漫画で。ジャンルとしては全く違うんですが、すずさんと料子には通じるような部分がある、それがロックなパーソナリティーなんです。下を向いている場合ではない。家族で明るく楽しく、ご飯を食べるために生きようとしている。
他のキャラクターにも言えますが、登場人物たちの健気さが世界観を表していて、今のところ嫌いなキャラ一人もいないんです。まぁお米くらいかな。人じゃないや。
そんな健気な料子ちゃんに、触れただけで腐らせる細菌者（ジャーム）や脱走した元囚人などが触れあっていくなかで、生まれていく料子の感情にも注目してます。

最初に長期休載を、と書いたように3巻の巨大アワビ編の終盤で連載がストップしました。なので先日２、3巻同時発売ということになったのですが、しれっとその続きから最近再開したのですが、素人目に見ても変わったことがあります。とりあえず表紙見てみましょう。

分かります？絵上手くなってるんですよ。
表紙だとちょっとまだ分かりにくいかもしれませんが、中身は3巻のラストあたりから別人が描いたんじゃないかってくらい上手くなってるんです。コマ割もなんの疑問もない。漫画が上手くなりました。
1巻を無料で公開しているので読んでほしいんですが、配色とか扉絵とか擬音とか個性的ではあるんですが、お世辞にも絵が上手い漫画とは……言えなかったんですよね。
作者はこれが1作目だし、こういう系の漫画って結構最近は多いので特に気にしてなかったんですが、休載明けから誰の目から見ても分かるくらいに突如画力があがって、しっかりアクション漫画のアクション部分も迫力を増してきました。元々オシャレな雰囲気があって、何がしたかったのかも画力と共に分かり易くなり…本当に再開後からの試し読みをしてほしいくらい！サンデー買って！
作者がまだ若いので成長加速度が凄いんでしょうか？
とくに休載明けからは話を煮詰めたのか急展開で、3巻最後に出てきたヤバそうな敵の「凩 」編はとくにワクワクしています。凩、マジで怖いけど人気でそうなキャラ…。

1巻と3巻の単行本のおまけに載っている漫画「料子の日々」は、切なくて愛しくて、ぜひ読んでほしいエピソードです。

ビジュアル的にもアニメで観たいなぁと思っていたんですが、実際TRIGGERに所属するアニメーター五十嵐海さんがこんなファンアートムービーを載せていました。

ryoko… pic.twitter.com/uqQbkMAAnP

— 五十嵐氵毎 (@kaiikarashi) February 21, 2019

 凄いな！

尻上がりに面白くなった一押し漫画です。
リスタートどころか、やっと始まったんじゃないだろうか。
ってことでRYOKOは3巻から！とか言ってみます。もうファンです。